出汁巻きたまごごはん

ごはん

 湯気をまとった黄金色の衣。一口含めば、じゅわっと優しい出汁の香りが染み渡る。

 日本には、明太子ご飯や鮭ご飯、おかかご飯など、様々なのっけご飯が存在する。その中でも、私がときたま無性に食べたくなるごはんが出汁巻きたまごごはんだ。

 冷蔵庫から出して乗っけるだけの明太子ご飯や梅干しご飯とは異なり、混ぜたり焼いたりと手間はかかるがその価値はある。

 用意する卵は3つ。ボウルに割入れたら、白身を切るように素早く混ぜる。空気が入らないように、箸をボウルの底につけたまま。白身と黄身が均一になったら、そこへ水と白出汁を加え、さらに混ぜる。

 出汁巻き卵のもとができたら、フライパンを熱して、その間に小さな器にサラダ油を溜める。小さく折りたたんだキッチンペーパーをサラダ油の器へ入れ、ぐっと油をしみこませたら、カンカンに温まったフライパンにサラダ油がしみこんだキッチンペーパーを滑らせ、薄く油をしく。まんべんなく油をしけたら、出汁巻き卵のもとを三分の一の量入れる。気泡ができたら、その都度つぶし、ある程度火が通ったらフライパンの手前から奥へと卵を三つ折りにする。それを三回繰り返し、よく知る出汁巻き卵の形に近づいてきたら火を止めて巻きすにあげて形を整える。

 我が家の卵焼きフライパンが古いせいなのか、私の腕の問題か、この出汁巻き卵は何度作っても途中でフライパンの底にくっついて形が崩れてしまうのだが、最後に巻きすで巻くことによってそれなりの形になる。

 本当は粗熱がとれてから包丁を入れたいのだが、出汁巻き卵を作る時はいつでも腹が空いている。結局我慢できずに熱々のまま、包丁を入れることになる。切り口から湯気とともに白出汁がじゅっと溢れ、腹ペコのくせしてさらに食欲がそそられる。

 熱々の出汁巻き卵を、これまた熱々のごはんにのせる。これで「出汁巻きたまごごはん」の完成である。これを「あつっ」と言って、口元を仰ぎながら食べるのが、なんだか一仕事終えたような充足感を得られるのだ。

 梅干しご飯でも、おかかご飯でも、鮭ご飯でも明太子ご飯でもなくて、出汁巻きたまごごはん。良かったら作ってみてほしい。特に落ち込んでいるときなんかに食べたら、初めて食べたんだとしても、なんだか懐かしいような、内側からぎゅっと守られているような、自分を大切にしてあげたくなるような、そんな優しい味が心に染みると思う。

◆出汁巻き卵の分量

  • 卵 Mサイズ…3個
  • 水…50ml
  • 白だし…大匙1

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