インドカレーはナンがいい

ごはん

 先週末は母の日だった。夕食を作ったが、その最中に急に気分が悪くなり、そのまま翌日は一日寝込んだ。翌々日もなんとなくベッドから出る気分になれないまま、昼過ぎまで寝込んでいたが、いつまでもこうしてはいられない、と起き上がる。しかし気分は浮かない。そこで少し自分を元気づけようと久しぶりに出前を取ることにした。

 出前サイトを開き、メニューを見る。中華、ラーメン、サンドイッチ、寿司もある。

 鬱屈とした気分を晴らしてくれるような激辛なものを食べようか、とも思ったが、胃腸の調子があまりよくなさそうだったので、却下。

 上から下、下から上、と繰り返しメニューを見る中で、割引されているメニューとしてインドカレーが表示されていることに気が付いた。カレーは好きだが、インドカレーは滅多に食べない。お店で買って食べたのは、これまで十回になるか、ならないか。

 インドカレーなら様々なスパイスが使われていて食欲を増進してくれそうだ。

 そういうわけで半額になっていたチキンカレーとナンのセットを注文した。送料もなし、というプロモーションだったので、サービス料を合わせても800円程度。出前にしては安く済んだ。

 出前の注文を終えると、またゴロゴロするうち、少しだけ開けていた窓越しにカチャンと門の開く音がした。スマホを確認すると、「配達が完了しました」の文字。バイクが走り去る音を確認してから、届いたカレーを取りに行った。

 届いたカレーは厳重にラップでくるまれており、アルミホイルでくるまれたナンはまだ温かかった。

 スパイスの香ばしく鮮やかな香りが鼻に届く。甘い小麦の匂いがするナンを一口サイズに切って、ルーへくぐらす。少し赤みがかったルーを、ナンの半分ほどつけたら口へ運ぶ。ふわぁっと濃厚な香りが口いっぱいに広がる。ふぅ、と満足気な鼻息が自然と出てくる。

 五段階あった辛さのうち、最も辛い「激辛」を選択したが、辛さよりも甘みを感じる。カレーの材料には詳しくないので、それが何の甘みなのかはわからないのだが、優しく濃厚な甘みとともに、ピリリと辛さが見え隠れしていた。食べているときは、そこまで辛いと感じないが、食べ進めるうち、額にじわじわと汗をかく。食べ終える頃には、頬が紅潮していた。

 インドカレーを食べたあと、いつも不思議に思うことがある。

 インドカレーを頼むとき、私はいつもナンを付けてもらうのだが、ナンを食べ終えてもルーは必ず残る。これが店舗なら、ナンをお代わりしても良いのだが、自宅にナンのお代わりはない。そこで白米をよそって、そこにかけて食べる。

 しかしこれが、ちっとも合わないのである。日本のカレーと日本のごはんは、最高のコンビだというのに、これがインドカレーになると日本のごはんとは全く反りが合わない。お米の甘みが勝ってしまって、カレーの味が霞んでしまう。食感についても、具材が殆ど煮込まれて固形状では入っていないインドカレーの中で、粒立ちの良いごはんの角が舌にうるさく当たる。まったく味に集中できない。

 食べているときには、どちらが日本らしくて、どちらはインドらしい、なんて区別は全く思いつかないのに、食べ終えてから、日本のカレーとインドカレーの違いをえらく感じる。

 そういえば、ナンは、香りこそ小麦の甘い香りがするが、単体で食べるとほとんど味がしない。カレーをつけることによって、ナンの甘みをうっすらと感じられる。

 パートナーによって美味しさまで変わるんだな、と数分だけしみじみとした。


【追伸】

 インドカレーの中に入っているゴロゴロのチキンは、どうやって掬い出すか、いつも迷う。ナンを半分に折って、スプーン状にして掬うか、スプーンを出してきてスプーンですくうか。迷った末、ナンですくおうとするが、結局うまく取り出せなくてスプーンで食べることになる。

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