まさか、ニンジンに対して「ほくほく」という表現を使うときがくるなんて、つい先日まで思いもしなかった。
ほんの数日前のこと、昼食の献立を考えながら冷蔵庫を開けると、ニンジンがたくさんあった。家にあることを忘れてか知らずか、誰かが追加で買ってきてしまったのだろう。
ビタミン豊富なニンジンは積極的に取りたい野菜のひとつではあるが、同時に美味しく量を食べるのが難しい野菜でもある。
ニンジンを使った料理には、キャロットラペ、ニンジンピラフ、スムージー、肉じゃが、カレーなどがあるが、どれも一人でニンジン一本分食べることは中々難しい。
特に私は火の通っていないニンジンが苦手である。独特の泥臭さが鼻に残るような気がして、気づくと眉根を寄せている。
身体のためには食べたいが、気づくとジャガイモやキャベツ、茄子やピーマンなどほかの野菜を手に取っている。
しかしその日は、あまりにもニンジンが余っているので、ニンジンを使った品を作ることにした。いつも献立を決める時は、ネット上でレシピを探す。「ニンジン_レシピ」、そう調べて出てきたなかで、最もその時の気持ちにフィットしたものを作る。
その日は「ソテー」だった。管理栄養士の方が考えたレシピで、使う材料はニンジンの他にたったの四つ。シンプルで良い。
洗ったニンジンは、皮をむかずにヘタだけ取って、縦半分に切る。フライパンにオリーブオイルと適量のバターを入れ、火にかける。バターが溶けてしゅわしゅわと白い泡がたちはじめたら、切り口を下にしてニンジンを入れる。蓋をしたら十分間、弱めの中火で蒸し焼きにする。十分経ったら、ニンジンを裏返して、さらに十分間火にかける。ニンジンにしっかりと火が通ったら、仕上げに塩とパセリを振って出来上がり。
一口食べて、はっとした。ほっくほくなのである。ほくほくの中でも、溶けそうなほどにやわらかい。ふおっくふぉっく、とでも言おうか。
これまで、じゃがいもやさつまいも、かぼちゃなどに使うことはあれど、ニンジンに使うことなど一度もなかった言葉。調理の仕方で、こんなにも美味しさは変わるのか、と本当に驚いた。
あまりの美味しさに、その翌日もニンジンのソテーを作ったくらいである。
※参考レシピでは「にんじんステーキ」とありますが、ソテーのほうが自分には身近な表現だったので、文章内では「ソテー」を使用しています。

また新鮮なにんじんを見つけたら作ってみよう。
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