落ち込んだ朝のオニオン生姜スープ

オニオン生姜スープ ごはん

一か月前から予約していた楽しみなイベントがあったが、当日の朝になると人混みの中へ行くことに漠然と不安を感じて、ベッドから出られなかった。

カーテンの閉ざした部屋ですっかり熱のこもった布団にくるまって、自分の駄目なところを数えていても埒が明かないので、昼近くになってようやく顔を洗いにベッドを出た。

食欲はなかったが、何かを食べないと一層気が滅入りそうだったので、何かを食べようと思いキッチンに立つ。炊飯器の保温ボタンが点灯しているが、衰弱した食欲がお米というもったり食べ応えのあるものを受け付けそうになかった。

オートミール雑炊ならほとんど咀嚼もいらないし、身体にも易しそうだが、作るのが面倒くさい。せめて汁ものを…。

悩んだ末、生姜スープを作ることにした。鍋にチューブの生姜を適量と、コンソメ一粒、水300mlを入れて煮立てればできる簡単なスープ。これなら、包丁も使わないし5分もあれば完成する。

鍋を出し、生姜チューブを探し冷蔵庫を開く。そこで手が、はた、と止まった。

私の脳裏に浮かんでいる生姜スープは、こんがり香ばしい甘みを帯びた生姜スープであることに気が付いた。それには玉ねぎを炒める必要がある。少々面倒だが、もう気持ちはすっかり飴色の玉ねぎが入った生姜スープ。

既に注いでいた水を鍋から量りへ戻し、鍋を乾かす傍らで、半玉分の玉ねぎをみじん切りにした。せっかく包丁を使うならと、すっかり切り口の乾いた生姜もみじん切りにした。

片手鍋にオリーブオイルを敷き、温まったら玉ねぎを投入。段々と甘い香りが立ち始め、玉ねぎが飴色になったら一度火を止め、水と生姜、コンソメの素を投入。あとはスープが煮立ち、コンソメの素が溶けたら出来上がりだ。

段々とコンソメの柔らかい色味が広がっていく様子を眺めていると、十代の頃に読んだ漫画「くーねるまるた」に出てきたソッパ(うろ覚えだが、確か…)という料理を思い出した。どこか外国の郷土料理で、熱々のスープにパンを浸して食べるのだ。当時は、スープにパンを浸すという感覚がなかったので、味に対しては半信半疑だったが、その発想が衝撃的で今でも覚えている。

と、そんなことをぼんやり考えているうち、香ばしい生姜スープが出来上がり、トースターから焼き上がりを告げる音がした。

半ば無意識的に焼いていたトーストを皿にうつし、同じくほどんど無意識下で焼いていた目玉焼きをトーストの上に載せる。

生姜スープだけのはずが、気が付けば立派な朝食が出来上がっていた。

階段を上がると、天窓から差し込んだ光が生姜スープの表面でてらてらと輝き、窓の外へ目をやるとなんとも良い天気だったのでベランダで食べることにした。

目玉焼きのかかっていないトーストの角を千切り、生姜スープに浸す。乾いたパンがじゅっと瞬時にスープを吸い、しんなりと溶けだすような食感になった。

二週間前まで、陽炎が見え隠れする暑さだったというのに、風の軽やかなこと。季節の変わり目は、人の気持ちを翻弄するが、終わるのはなんと呆気ないことだろう。


さて、締めくくりの言葉が浮かばないので、中途半端ですが、ここまで。

今日は穏やかな良い日です。日差しは温かく、すこし日の下にいると身体が火照るけれど風は爽やか。

It’s a comfortable day. I’ll take a nap.

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